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管理人の日記/2010年02月14日/ニューヨーク #blognavi
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#blognavi 新訳のZの2を観てきました。 ベルトーチカ登場からハマーン様登場まで。 うーん、どのあたりが新訳なのか分かる程、テレビのあらすじとかセリフを見ていなかったから、こんなもんだっけ? って感想が第1です。あらら。 なんか一番印象に残ったのが、特攻をかけるシーンだったのが・・・。ウッダー大佐が艦内放送で「サイコガンダムがアウドムラの足を止められればいいが、それがかなわない時は本艦は特攻を行う。全員退艦せよ」とか言った後。一度はびっくりして振り向いたブリッジ要員がブリッジから姿を消すが、しばらくして5・6人戻ってくる。 「大佐、自分達にも手伝わせてください!」 「大佐だけを一人で逝かせはしません」 「おまえ達・・・すまん!」 と言って、ウッダー大佐が頭を下げるシーン。久しぶりにこういうシーンを見た気がした。後はフォウがマークⅡがブースターで宇宙にあがる時に、落ちていく所。 あれ、こんなシーンあったっけ? なんか、これで死んだっぽいじゃん・・・ キリマンジャロはどうした!? と、一人で話がすごい変わっているのか? とちんぷんかんぷんでした。が、テレビでもいかにもここで死んだように見えたとのこと。 今回はやたらキスシーンが多かったなあ。サブタイトルが恋人達だからなんだろうけど、フォウよりサラの方が目立ってたな。 ブレックス准将が亡くなって、ダカール演説があると思っていたのに、違うんですね。どうでもいいが、なんか、議会でのクワトロの白シャツ姿にすごい違和感を感じた。 テレビと新訳との一番の違いは髪の毛の多さだと思った。だって、動く動く。 カテゴリ [いろいろ感想] - trackback- 2005年11月05日 12 31 48 #blognavi
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大崩壊が起こる前、世界は栄華を極めていた。特に著しかったのが再生医療の分野で、プラントも遺伝子解析から応用へと最先端を走る企業だった。増毛、歯、視力から始まって身体機能の復元にまで至り、人類は禁断の領域へと踏み込む。 すなわち人を超えた種の創造と、いつの時代でもある軍事力への応用である。オーブ財団は前者を、プラントは後者で一歩抜き出て、両者が手を組むことで畏怖と更なる飛躍が期待された。 プラントが月面探査で採集した未知の物体の構造解析から、染色体反応が出たのだ。これを現代科学に応用することで、プラントは世界における地位を各個たるものにしようと画策する。ついにプラントとオーブは、牽制し合って共同研究を始めた。 「私もその時、初めて人工子宮生まれの人類を見たが、確かにどこか違ったよ」 オーブから送り込まれた科学者はまだ二十歳にも満たない青年だったが、プラントの第一線の科学者達を凌駕していた。唯一対等に渡り合えたのは、ほんの一握りだけ。 「最も、そういう刺激があったからこそ、ジーンブレイドは生まれたと言える。研究チームの中心メンバー二人はお互いをライバル視していたしからね」 「ですが、ジーンブレイドは失われてしまった」 「君も知っての通りだ。表向きは事故となっているが」 オーブの科学者とプラント会長の令嬢が恋に落ちてしまったのだ。ジーンブレイドの危険性に気づいた二人は、武器として使われることを恐れジーンブレイドを盗み出して逃亡。 「理想に燃えて夢を語り、世界を憂う。皆、若かったのだろうな・・・うちの研究チームのメンバーまで同調して出て行ったのだから」 「似ているのだよ。ライバルを裏切った・・・彼にね」 5 レイが医療カプセルから出て、ベッドに寝かされているアレックスの様子を伺う。朝になって、意識を取り戻したとコールを受けたのだ。上半身を起こして、ぼんやり考え込んでいる様子を見ると、先程まで意識不明の重態だったとは思えない回復力である。レイに気がついた彼が、顔を上げて開口一番に言った。 「家に連絡しないと!」 「は?」 「この部屋、通信手段が、どうしよう。イズーが心配してるかも・・・」 「ああ、でしたら、これをお使い下さい」 自分の使っている通信端末を彼に差し出すと大慌てで、ボタンを押している。コール音を聞いている時も、端末を持つ手や肩に力が入っている。やっと繋がったのだろう、目に見えて安心している。 「父さん、ちょっと仕事が長引いて遅くなるかも知れないから・・・うん、そう・・・何かあったら、すぐにシンやルナマリアの所に行くんだぞ」 表情ががらりと変わる。 「えっ、壁がさびしいから絵を描いたって?・・・そうか・・・イズーは画家の才能もあるんだな・・・うんうん・・・楽しみにしてるよ」 通話を切って、端末をレイに返す彼はそれはもう嬉しそうにしている。 「貴方は変わった人です。こうして普通に話しているとただの親馬鹿なのに」 「お、親ばかって!?」 アレックスは恥ずかしくなって、慌てて手を振って否定するがそれはかえって逆効果だ。 「ジーンブレイドを発動している貴方は心底破壊を楽しんでいるように見える」 ギャップがありすぎるのだとレイは言う。 否定したい。けれど、否定できない。初めは薄っすらとしたものだったけれど、今ではジーンブレイド化している自分をはっきりと認識できる。昨日の戦いで自分が口走ったことだってしっかりと覚えている。 「ブレイド発動に伴う負担は相当なもののはずです。分かっていないことも多い、今回のようなことも、そうそう助かるものでもありません」 死に掛けたのだと説明された。重症を追い、8時間も意識不明に陥ったのだと。自分と同じジーンブレイドの持ち主とやりあったことも、敵わなかったことも覚えている。 「無理はしないことです」 「負けないさ」 いつだって、そんな事を考えたことがなかった。 いつもどおり、ターゲットのコーディを倒して家に戻る。そこにはイズーは寝ないで待っていて(最近は、遅くなることが多いから、眠っていることが多いけど)いない間にあった出来事を聞かせてくれる。 「貴方だって、自分が利用されていると分かっているはずです。そのデータはフィードバックされ、プラントの研究に利用される」 「そんな事分かってるさ・・・」 こんなことをしているのもイズーの為だ。 「そうですか・・・とにかく、行き過ぎた行動だけは慎んでください。それではコーディと同じですから。それから、もう一つの左のジーンブレイドにはくれぐれも注意してください」 ベッドから起き上がって、待機していたバンに乗り込んだ。アレックスは、遭遇した青いジーンブレイドを持つ男を思い出す。 相手は自分を知っているようだった。無くした記憶に関係あるのか・・・覚えていないことに腹を立てていた。それなら、何か教えてくれればいいのに、お互いぶつかり合ったのだからたいした関係ではないのだろう。彼はジーンブレイドを寄越せと言って、攻撃してきたのだから。 その時の痛みを思い出して、アレックスは右腕に残る痣を見る。相手のブレイドに貫かれた時感じたのは、痛みだけではなかったのだ。 俺は、ジーンブレイドを持ち続けることに、イズーを利用していないか? 俯いたまま考え込む内に、我が家であるアパートメントが見えてきた。 クリーニングが入ってひとさらいされた部屋はどこもかしこもきれいで、今、イザークが睨めっこしている壁も真っ白のままだった。正面にチラシの裏に描いたパステル画を貼り付けて、唸る。 「やっぱり、もうちょっと右」 小さな手でずずず・・・と右へずらし、続けて、片足ずつ右へトトト・・・とずれる。もう、そんな事を2・3回繰り返していた。壁の一番目立つ所の真ん中に貼り付けようと思っているのだが、中々場所が定まらない。 「紙が小さいんだ。もっと大きな絵なら」 そう言って、ダイニングのテーブルの上に目をやる。まだ落書きをしていないチラシが数枚残っている。けれど、どれも大きさは同じ。暫くその紙と壁の絵を交互に見比べる。 「もう一枚描けばいいんだ」 父さんにも画家の才能があると言われたばかりだし。 イザークは冷蔵庫の上の時計を見て時間を確認すると、チラシとパステルを持って1階のレストランへと向かった。 まずは、青で丸を描く。続いて隣に、白色で丸を。 今日の服は水色だから次は水色で、父が昨日着ていた服は何色だっただろう? 「あーお、しーろ、みーずいろー♪ ん?」 「何描いてんだよ?」 シンがやって来てイザークが描いているものを覗き込む。後でプッと笑い声が聞こえたから、チラシの端っこに黒い丸に赤いパステルで豚の鼻を描いた。 「お前、まさかこれが俺だって言うんじゃないだろうな!」 「違う。これ、シンブー」 「何、もう始めてるの?」 「父さんが帰って来る前に完成させないと」 ルナマリアもやって来て、カウンターの中で食器やグラスのセットを始めた。開店準備を一通り終えて、イザークの落書きに混じる頃にはもう昼前。 「もうやめちゃったの?」 テーブルはカウンター近くの端っこに移動して、営業の邪魔にならないようにしているが、その手は殆ど動いていない。 「心配ないわよ! ちゃんと連絡あったんでしょ?」 「んだよ、やっぱりパパが恋しいのか!?」 開店前のレストランでイザークは勉強を見てもらっていたが、どうにも落ち着かなくてルナマリアが宥め、シンがからかう。 「ち、違うぞ。父さんまた何か、しでかしたも知れないし」 描きかけていたパステルが止まる。父さんを驚かせようと思って、隣に貼る絵を描いていたのに。最近事件が多いから、怪我をしたのかも知れないし、遠くまで行ってしまったのかも知れない。レストランのドアがいつ開くかとずっと気にしている自分がいるのだ。 カランとドアが開く音に、思いっきり振り返る。耳の下で切りそろえられた銀髪が広がる。 「貴方が、イザーク・ディノね?」 入ってきたのは、待っている父ではなく、栗色の髪の女性だった。父じゃなくてがっかりしている上に、イザークはその人を知らないのに、向こうは知っているらしい。どことなく面白くなくて、返事はひどくぶっきらぼう。 「はい」 「お父さんはどこ? 大切な話があるのだけど」 「あ・・・っと、この子の父親なら仕事でいないわ」 しかし、女性はつかつかと近寄ってきて、イザークがいる隣のテーブルにまで来て荷物を置く。腰に手を当てて、レストランを見回してもう一度イザークを見た。 「大事なお話なのだけど、連絡取れないかしら。貴方の将来にかかわる話なのよ?」 「将来ってどういう意味だよ」 シンが口をはさむ 「イザーク・ディノ君。貴方は児童福祉省に保護されることになったの。もうこんな所で働かなくていいのよ?」 「働くって! 私はイズーの勉強を見ているだけよ」 「勉強なの?」 テーブルの上に視線が注がれるのを感じて、イザークは手で書きかけの絵を隠す。小さな手で隠れる所は僅かだったけれど。 「まあ上手、でもね、お勉強はお絵かきだけじゃないの?」 「あのなあ、イズーは今更勉強しなくても、十分できるんだよ! ニュースや新聞だって読めるし、掛け算割り算だってばっちりなの! アレックスさんだって帰ってないんだし、さっさと帰れよ!」 「・・・シン」 向きになって反論しているのは日頃よく口げんかをしているシンで、イザークは自分が何を言い出すタイミングを逃してしまった。 自分がどこかに行かなければならない。よくないことが起ころうとしているのが分かってこの女性から何も聞いてはいけない、そんな気がして、早く帰って欲しかった。 「あの」 「イズーは黙ってて! こんなおばさんにそう易々と渡してたまるもんですか」 「おば・・・」 ルナマリアがイザークを抱え込んで睨みつけている。 「仕方ないわ、今日の所は」 女性がテーブルの書類を持ち上げて入り口へと向かった時、ドアが開いた。 「ただいまー」 やっと帰ってくれると思ったのに、なんてタイミングの悪い・・・。父さんはいつもこうだったとがっかりした。 返事がないのを不思議に思ったのだろう、アレックスが顔を上げる。そして、うっと動きを止めた。シンやルナマリアの冷たい視線と、イザークのため息が零れる。そして、フロアに見知らぬ女性がいるのに気がついた。緩やかにカールした髪が肩口にたれ、それは見事なプロポーションの女性が微笑を浮かべて立っている。 「貴方がアレックス・ディノさんかしら?」 「え、あ、はい。そうですが」 「私、児童福祉省のラミアスといいます。貴方にお伝えしなければならないことがあります、少し、お時間いただけるかしら?」 児童福祉省が何の用だといぶかしみ、シンやルナマリアの表情からイザークのことだと思い当たる。 「時間を・・・」 「お手間は取らせないわ」 「は、はい」 「父さん!」 イザークが心配そうに、ルナマリアの腕を抜け出して足に抱きつく。何、ちょっと話を聞くだけだと、しゃがんで頭を撫でる。子供のイザークではまだ、アレックスの背中に手は回らなくて、服をぎゅっと握るのが精一杯だった。 「こうして見ると、まるで本当の親子のようね」 アレックスは耳を疑った。 「残念だわ、親子じゃないなんて・・・」 アレックスもイザークも声のした方、女性を見上げる。彼女は柔らかく微笑んでいたけれど、そのルージュの口びるから放たれる言葉はとても残酷なものだった。 「いずれ分かる話だからここで言うわね。あなた達親子の間に血縁関係がない事が判明したの。ですから、アレックス・ディノさん。貴方のイザーク君に対する親権は消滅したのよ」 「何を・・・」 言い出すんだ? アレックスは呆然とする。イザークを抱きしめる手に力が入り、何から尋ねたらいいのか分からない。何かとてつもないことを言われている。俺とイザークがなんだって? 親子じゃない? 「突然のことで驚かれたでしょうけど、政府は子供を保護する義務があるの」 「ちょっと待ってください!」 この女性は俺からイザークを取り上げようとしている。 俺とイザークが親子じゃないと言って、俺が育てる権利がないと言う。 「親子じゃないってどう言う事ですかっ!?」 返事の替わりに差し出されたのは、DNA鑑定証明書。引ったくって、文面を追う。書いてある事の科学的な意味はわからなくても、文字が親子であることを否定している。初めからそう書くことが決まりであるかのように、流れるように導かれる答えに薄っぺらい紙が歪むほどに力が入る。 「勿論、家族がいる場合はその方の意見が尊重されるわ、けれど、ただの保護者ではね」 「どうして、今頃になって・・・」 俺の記憶がないからか? イザークを一人にしておいたから、それとも、本当は俺が―――。 「とにかく、大事な初等教育の時期に間に合ってよかったわ。まずこちらの書類にサインお願いします」 バッグから取り出された書類と万年筆。 許諾書にサインしたら、俺はイザークと一緒にいられなくなる? 「できるわけがない」 「そうね、急ですものね。明日まで待ちましょうか。けれど、イザーク君の保護義務はもう政府にあるの、今日は私と一緒に行くことになるわ」 「そんな・・・」 「・・・いやだ」 ぎゅっとしがみついて、顔を埋めるイザーク。ラミアスが殊更優しい声で、イザークに話しかけた。施設にいっぱいいるお友達のこと、色々なことが勉強できること、そして。 「別にもう二度と会えなくなるわけじゃないのよ?」 頭をふるイザークを見て、彼女はさびしそうな顔をするがすぐに表情を切り替えてアレックスを見た。 「よく考えてくださいね、何がイザーク君にとって一番いいのか。曲がりなりにも6年間親をやったのなら、分かるはずでしょう?」 「言われなくたって」 考えている。誰よりもイザークの事を考え、心配していると言えればよかった。 しかし、今のアレックスにはジーンブレイドを発動して破壊を楽しむと言う、もう一人の自分がいた。不安が伝わったのか、自分の気持ちに素直になったのはイザークの方だった。 「父さんと一緒がいい」 女性の方を見もせずに、頑なに拒んでいる。嫌だ嫌だと繰り返せば、見逃してもらえるかのように、アレックスに抱きついて自分を隠そうとしている。 「行かないからな。行かないったら・・・行かない」 「イザーク君、行きたくないってあまり抵抗すると、お父さんが誘拐罪で捕まっちゃうのよ?」 ビクッとして顔を上げる。 アレックスを見上げて、口をへの字に曲げる。真っ青な瞳が潤んでいて、アレックスは自分の方が泣きそうになった。自分は罪でも何でも構わないから離したくないのに、罪になると聞いて、イザークがそれを気にしないはずがない。 「イズー・・・」 そろそろと手を離して、俯いたイザークは唇を噛んでいた。 「そんなの卑怯だわ」 ルナマリアの呟きすら気にせずに、ラミアスがイザークに手を差し出した。一向に握らないイザークに諦めたのか、肩に手を置いて出発を促した。レストランの入り口のドアが閉まり、その揺れさえ消えうせてもアレックスは動けなかった。 チラシの裏に描かれていたのは青い頭の大きな人と白い頭の小さな人らしきもの。端にはシンやルナマリアを描いたのだと思われる丸が描いてあった。描きかけの絵を見つけて手に取って、エレベーターホールに向かう。シンやルナマリアが何も言わないのが今はありがたかった。 部屋の鍵を開けて、ダイニングのテーブルの上に荷物を置くと、フッと目に入る位置に絵が張ってあった。 「ちょっと傾いてるぞ、イズー」 電話で話していた自信作だろう。 「これでいいんだ」 化け物の親を持つより、福祉施設で引き取ってもらった方がイザークの為だ。そこは安全だし、教育も受けられる。友達だってできるだろう。 今しがた描いていた絵も隣に飾ろうと思って壁に当てる。膝をついて向き合い、手を乗せるともう視界がぼやけてきた。腕の力が抜けて頭が壁に当たる。イザークは泣かなかったのに、守られた父親は情けなさにポタリと床に涙が落ちた。 イザークはオーブ財団と政府が共同で建設した、児童福祉施設の一室にいた。来る途中、大勢の子供達の騒ぎ声が聞こえて、張り詰めた意識が少しだけほぐれる。少なくともここには、大勢の子供がいる。とは言っても、とりあえず案内された部屋で、借りてきた猫のようにジッとしているだけだが。 「その子が例の子供ですのね?」 「ええ。まだちょっと緊張して大人しいけれど、本当は元気な子よ」 一人ぽつんと座っている少年をこっそりモニタ上から覗く女性が1人。イザークをここに連れてきたラミアスが画面上で長いピンク色の髪が印象的な女性と会話を交わす。 「まあ、銀髪ですのね、こんなきれいな髪を見たのは久しぶ、り・・・」 画面の中で頭を動かした少年の横顔が映る。サラサラの銀髪がゆれ、瞬きした向こうにあるのは、吸い込まれそうなそれはそれは青い瞳。言葉を切ってしまったマザーを前にして、ラミアスが続きを促すが、反応がないのを見て話題を変える。 「そう言えば、諜報部から良くない噂を聞きました。プラントがコーディ対策ワクチンを開発したと」 「その件なら今詳しい情報を収集ですの。怖いのは、救済と称して臨床試験を強制することです。大崩壊の影響で私達は皆、コーディ化する因子を持っています」 「ワクチンはそれを防ぎ無効化するものだと」 「私達はその真偽を確かめねばなりません」 収まらないコーディ化現象と増え続ける犯罪。 そこへ、もう一つのジーンブレイドの出現による混乱が起こっている。ラミアスは一気に暗くなってしまった会話を元に戻して、イザークのことに再び触れた。いつまでも財団のカリスマ、マザーと話しているわけにもいかない。 「簡単な検査をして、大部屋に移すわ」 「そうしてくださいな。一人は寂しいですから」 暫くしてラミアスが戻り部屋から出る。身長、体重を測って、イザークが次につれられたのは沢山の子供達が集う、レクリエーションルームを見下ろせる部屋だった。イザークよりも大きな子も小さな子もいる。男の子も女の子もいて一緒に遊んだりしている。 「これからお友達になるみんなよ。今日は、お姉さんと一緒の部屋だけど、明日からは皆と一緒だから安心して」 何をするでもなく一日が過ぎ、ラミアスが部屋に戻ると呆れてベッドに腰掛ける。 「テレビくらい見ていてもいいのよ? それとも遣い方が分からなかった?」 「知ってるよ」 馬鹿にするなと言いたかったけれど、相手は女性だから黙っておいた。帰ってきたのだから、もういいだろうと思って、布団を捲る。 「おやすみなさい」 「え、ええ。おやすみなさい」 潜り込んで丸くなる。隣のベッドでため息をついている彼女に気がついたけれど、気がつかないふりをした。こんなのは夢で、目が覚めたら父さんが隣でグースカ寝ているんだと言い聞かせて目を閉じる。 その日の夢は、いつものように戦い続ける夢ではなかった。 ビルも人も、何もない真っ白な世界。 一つだけ光ったのは、流れ落ちる涙だった。 誰か、泣いてる? 次に目に入ったのは血だらけの手。ずいっと伸ばされた手がもう少しで触れると言う時、ふわふわと透き通っていく。それもつかの間、白い世界を瞬時に埋め尽くす闇の中で光る青いブレードと紫の瞳。辛うじて残った残像で思い当たる人と言えば、いつも夢の中で向き合うアイツしかしない。 アイツは敵じゃないか。 おかしいよ。どうしてこんなに、安心しているんだろう。 戻る 次へ * ザ☆急展開。すいません、毎度のお約束な展開で。バレバレな事を、何!昔そんな事が!? ッて感じで書くのってなんだか恥ずかしいですね。
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#blognavi 今、非常に気分が悪いです。 むかついています。 そう、いろいろと噂の飛び交う最終回目前の種デスアニメです。ガンダムだからちょっくら見てみるかな、程度の取っ掛かりで面白そうだったら見ようって程度でした、最初は。おかげで、前作はあんまり見なかった(笑)キャラクターの絵が駄目だったんだな。それが、衝撃のファーストブリット!のあれとか意外と楽しめて、顔と服装のセンスに耐性が付きました。 管理人は基本的に、どちらかが一方的に勝ったりする話はあまり好きじゃなくて、ついつい敵方を応援していまうタイプです。悪役には悪の正義があり、喧嘩両成敗や、因果を結構気にします。だから、正直、今の展開はあまり面白くありません。破綻したセリフ、一方に都合のいい展開に、正直、脚本家はプロなのかと疑問です。素人に突っ込まれるような話造りってどうなの? それで飯食えるの? ゾイドの時も散々文句を言いましたが、下には下がいた。言い換えれば、アニメなんぞを見るような歳でもないってことなんですが。 天秤が傾き過ぎだと超つまらない。どっちかが勝つの?ハラハラドキドキ、そんな展開を希望しているのに、勝負の決まっている戦いなんて面白くもなんともない。オーブ陣営、一時あっ、やばいんちゃうっ!?とはなっても、最後は「悪は倒された」「世界は救われた」となってどうやっても負けるとは思えない。ぶっちゃけ、主要メンバーで犠牲も出ないだろうと。MIAで子供誕生なんて犠牲でもなんでもないですから。どっちにも言えるけど。 最終回が最も面白くなさそうだ。ガンダムなんてMSが動いてナンボのアニメなんだよ、それが、ラスト口喧嘩だと?あんな、狙われたら女性を置いて真っ先に逃げるような男がSWのEP6をパクろうなんて、恥ずかしいと思わないのか。 基本的にメカが目当てなので戦闘シーンが多いほうがいい。だから、ラストは期待しているのですが、あまり期待できなさそうです。戦闘中にキャラ同士が叫びあうのは、戦闘シーンの負荷を減らすための仕方ない措置なんだ。今はデジタルで彩色できるんだから、ガシガシやってくれよ~。つまらん三文芝居に時間をかけないでくれ~。 あー、ラストでラクスかキラかアスランが本当に死亡しないかな。行方不明とかじゃなくて、さ。あわあわ。オーブ滅亡でもいい。最も、腹立つのは宗雄だけど(蔑称で十分)こっちは因果が巡りそうだからまあ、いいです。もう、ステラ達が気の毒で気の毒で(涙涙・・・) キラやラクスが好きな人は、腹の立つ内容だと思うけど、こういう意見の人もいるんですよ。途中から読んでいないと思うけど、意見なら受けて立つのでいらっしゃい。こんな海底で叫んでも負け犬の遠吠えに過ぎないのが悔しいけど。キラもラクスもそんなにキライなキャラじゃなかったのに、どうしてこうなるかな、この二人が好きだったらさぞカタルシスを感じる展開だろうになあ・・・。 あー。こういうの後で読むと「あちゃー」と思うんだろうな。 だが、最終回まえの偽らざる気持ちということで。もしかしたら、納得のいく最終回になるかも知れないし。 うん。まだ希望はある! カテゴリ [いろいろ感想] - trackback- 2005年09月26日 22 09 41 名前 コメント #blognavi
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管理人の日記/2010年07月04日/バーゲン #blognavi
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#blognavi バックをチェック柄にしてみました。イギリスチェック柄が流行りってことなので。 色と幅を選んでチェック柄を自動生成するサイト があったのでそれで作ってみましたが・・・これは配色センスが問われますね。いろいろと試行錯誤するけれども、どれもこれもうーむです。やればやるほどイメージしたものと離れていく気がしたのでもう、ええい、ままよ!です。 そこから、写真屋で加工して端っこのびらびらを作るのにまた時間かかりました。 透過オプションを外したので字が見やすくなった気がしなくもない? カテゴリ [つれづれ] - trackback- 2009年01月07日 00 14 01 #blognavi
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Level 26 空間が歪んでテレポートで現れた親衛隊にずらりと囲まれる。ルナマリアやメイリン、レイも彼らに拘束されて、再びシンはジュールの杖を渡せと迫られる。 「仲間と交換だ。仲間を放せっ! 早くっ」 「仕方がないなあ」 キラが親衛隊に目配せをしてレイ達の拘束が解かれる、咳き込んでいるメイリンをルナマリアが介抱するが、シンとの間に割り込んだ親衛隊がレイ達と合流するのを阻む。シンは後目でそれを確認すると、ペガサスの背に目をやった。 「あいつもだっ」 「彼は仲間じゃないでしょ」 「いいから離せよっ、杖が欲しくないのかっ」 シンが一歩前に出て、杖を突き出す。 「ジュールの杖が先だよ」 シンはもう一度ペガサスの背を見て、杖を手放した。 相手の紫の目が細まり、無表情のまま後に飛びのく。 「約束が違うっ、アスランを返せよっ!」 「悪いけど・・・彼もまだ渡せないんだ。杖を探してくれて礼を言うよ」 「約束が違うっ・・・お前っ!」 そのままペガサスに飛び乗ろうとするから、シンは駆け出した。 振り下ろしたソードは宙を切り、シンは斬り付けた男の瞳から光が消えたような気がした。目を凝らした瞬間、空気が揺れる。 「しつこいよ」 紫電が走る。 目の前に現れた男の剣をシンは受け止めたはずが、ガキンと剣は空高く舞い上がり、シンの手を離れる。折れた剣先がドスッと地面に突き刺さる。 喉元に伸びる剣。 よけられない・・・! 視界が真っ白に染まり、カキーンと耳をつんざく音が響き渡たった。 何かが剣を阻んでいる。 それは、シンとキラの間に突如出現した剣。 細長い透明な刃が、彼の剣を受け止めていた。 刃の向こうに目を見開いたキラの顔が見える。紅の瞳と紫の瞳がぶつかり合い、それだけで殺されそうな眼力を持つ瞳に既視感を覚える。奥を探るような。 まるで、ドラゴンの瞳。 紫の瞳に浮かび上がる縦長の虹彩。 ヒュッ。 シンとキラが謎の剣を挟んで向かい合う間、一瞬の隙を突いてペガサスに矢が突き刺さる。 シンはそれがレイの矢だと気付き、飛び立っていたペガサスが空中でバランスを崩すの見る。キラも僅かに目を動かしてそれを確認していて、親衛隊が動けば、ルナマリアの魔法が彼らの前に炎の壁を作った。 「取り戻したければ追っておいでよ。君の役目だ」 シンよりも早く、キラが落ちるペガサスからアスランを抱きかかえると、その場でテレポートのゲートを開ける。 「待てよッ!」 目の前にあった剣を掴むと、そのゲート目掛けて走る。 ありったけの力を込めてジャンプし、閉じかけたゲートに飛び込んだ。 空間転移する魔法の入り口が閉まった瞬間から、ゲートとゲートを繋ぐ通路が猛スピードで消えていく。 間に合ってくれよっ。くっそ―――っ! シンは背中に迫った入り口と目前に見える出口に挟まれて、途中の空間に放り出された。落下する体が建物の屋根に落ち、硬い石の上を転がり落ちる。全身が痺れてすぐに起き上がれず、両膝と手をついて頭を振った。透明な刃を持つ剣はシンの手にあって、轟音を耳にしてシンは空を見上げた。 一体、何が起こっているんだ・・・っ!? Level 27 武装した衛兵が王宮へと迫る。 衛兵に命令を出しているのは鉄仮面を被った執政で、王宮の塔と同じ高さにまで積み重ねられた議会の塔とでにらみ合いが続いていた。 議会の評決を無視する女王に退位を迫る議会と、それを拒否する女王。近衛兵と衛兵との小競り合いが続き、一進一退の攻防も徐々に議会側が押し始めていたそんな矢先。 クライン執政の背後にテレポートしてきた騎士がいた。 「・・・杖を」 執政がキラの手にした杖を見て、塔に居並ぶメイジ達に号令をかける。 「魔力込め―――っ!」 「何をするつも・・・っ!?」 執政が手を振り下ろす。 「そんな事をしたら、女王はゴールドドラゴンをっ!」 議会の塔に設置された、巨大な投槍器から一斉に魔力を帯びた槍が放たれた。 炎や稲妻、氷、様々な属性を帯びた長槍が一直線に王宮に迫る。 次々と槍は塔へと突き刺さり、あるいは突き抜け、塔の一部が崩れ落ちる。 地上での競り合いを気にしていた女王が、議会の塔の最上階を見る。 矢継ぎ早に放たれる魔力の矢に女王が陣を張る塔が震撼する。瀟洒な瑠璃の窓は破られ壁が崩れて女王を守っていた近衛兵が何人か犠牲になった。崩れる塔の下には大勢の兵がひしめき合っている。 女王はついに君主の杖を振るった。 ドラゴンズピークから飛来するゴールドドラゴン達が王都の空に舞う。ゴールドドラゴンのブレスが議会の塔を狙い燃え上がった塔の一部が崩れて落下する。 燃える石の塊が降ってきて、シンは慌ててその場から動いた。地上にバラバラと破片が降り注ぎ、ドラゴンが地表近くを飛べば、竜巻が起こって衛兵や近衛兵が吹き飛ばされる。 壁に掴まり、柱に隠れたりして突風をやり過ごす。 シンが落ちた場所。 そこは王都王宮の一角で、空には無数のゴールドドラゴンが飛び交っていた。 議会塔の上の方、先ほどから魔法が放たれる場所に探し求めるものがあると感じたシンは、衛兵がひしめく中を最上階を目指して登り始めた。 続く あああ。どうにもうまく纏まらないけれど、これ以上うんうん唸っていてもきっと纏まらないから、今宵はここまでにしとうございます。ガクッ。
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一見、中空に浮いた中世の城を模したエントランスでも、周囲は厳重にセキュリティに守られ、不審者は自動攻撃レーザーが排除する。レセプションにはそうそうたる顔ぶれが集まると来ては市側も神経を尖らせないわけには行かない。 足元のガラスの階段の下に街のネオンが透けて見える。母をエスコートしてホールへの階段を上るイザークが、イブニングドレス姿のエザリアに手を差し伸べる。意識して化粧した母の容貌は息子の贔屓目を抜きにしても素晴らしく美しいもので。 ばかばかしい。 会う人ごとに美しいと賛辞され、更に自分がその母にそっくりだと言われるのだ。稀なブルーの色合いとラインの美しさが勝負のイブニングドレスとは正反対の、前時代的なフォーマルを身に纏っていると言うのに。イザークはその身を銀の刺繍地のスーツで包み、スタンドカラーに白のレースタイ、パールのカフスを加え、髪を後で括った全身白銀の出で立ちであった。 華やかなホールに集う参加者も皆、似たり寄ったりの格好で談笑の花があちこちで咲いている。 「相変わらず、お美しい」 手のひらを寄せて口付ける男性にエザリアも気後れせず応対する。 「ご子息もご立派になられた」 「まだまだ不精者で、今日もようやく引っ張り出してきましたのよ」 日々、評議会で手腕を振るう施政者としての母の顔。 「エザリア女史をここまでてこずらせるとは、それはまた頼もしい」 はっきり言ってイザークはこういった、腹を探り合うような会話が好きではない。探るような視線で自分を値踏みする。官僚にしても経済人にしても、どれだけの利益をもたらすか、ただ将来を見据えて自分と言葉を交わすのだ。 だから、条約締結に携わった外務次官と言えども会話が続かない。夫婦同伴で会場の男女の数はかけ離れて女性が少ないわけではないのだが、評議員とあってエザリアには多くの来場者が一言挨拶を述べに来る。そのたびに似たり寄ったりの応対を迫られたイザークがそろそろこの場を離れたいと思ったとき、エザリアが見つけた相手に自ら出向いた。 「会えるのを楽しみにしていたわ、レノア!」 「まあ、エザリア」 母の駆け寄る相手に挨拶をしようとして、イザークは目を瞠った。母の前に立つ女性、それがあまりにアスランにそっくりだったからだ。柔らかい笑みと女性らしさを除けは、髪も瞳も顔立ちさえ、生き写しだった。美しい朱桜色のドレスを誉める事すら忘れていた。 「イザーク。何を見惚れているの、挨拶なさい。こちら、プラント会長のレノア・ザラ。うちの息子が失礼をしたわ」 やはり、うわさは本当なのだな。 パーティの華となっている二人の女性を遠めに見て、イザークは目立たぬように壁の花となっていた。レノア・ザラと名乗る女性は後ろに重役やボディガードを従える、あのプラントのトップなのだと言う。温和な雰囲気からはとてもそうは見えないとイザークは思う。 ペットロボットの最高級ブランド、プラント。本物そっくりの芸術品を世に送り出す、不世出の技術を誇る会社は、その裏では最大のテロ支援企業とも言われている。ペットロボ会社がテロ活動を支援して、社会不安を煽っていては企業活動に反することになるが、プラントは純粋にペットロボだけを作っているわけではない。グループ企業の末端にある関連会社ザフトが扱っているのは、その高い技術力を応用した兵器であった。 それにあの顔。 奴の得たいの知れない武器はプラント製の武器と言うことか? いつも素手で天使を屠っているように見えるが、本当に素手で天使を倒しているとは思っていない。何かカラクリがあるのだと睨んでいたが・・・。自然と険しい顔つきになるイザークに話し掛ける兵の女性はここにはおらず、イザークはレノアを観察する。母のように表情に幅があるわけではないが、優雅な大人の女性である。 「ご母堂を放っておいていいのかね」 しかし、臆せず話かける男がいた。怪しい事この上ない、金髪長髪の仮面をつけた男だった。 一切の暖かさを排除して初対面の男を睨みつける。 「失礼だが、貴殿は?」 「これは失礼。私はラウ・ル・クルーゼ。これでもプラント重役会の末席に名を連ねていてね」 手にシャンパングラスを持つ姿は、確かに堂に入っていて、ただの参加者ではない。今回のレセプションの参加者は一通りチェックしたつもりのイザークは内心舌打ちする。 この男、ノーマークだったな。 年齢不詳の、どちらかと言えば若い部類に入る男がにこやかに談笑する二人に視線を向ける。 「女二人が集えば、かしましい、とね。君の話題で持ちきりだよ」 「私の?」 できればお近づきになりたくないタイプだが、相手がプラントの重役では無下にあしらう事もできない。 「二人とも年頃の息子を持つ身だから、話題が尽きないのだろうね」 イザークの方から会話を存続させるなど全く珍しいことで、先ほどまで思考の中心だった懸案事項が飛び出して思わず聞き返していた。 「ご子息がおられるのか」 「めったに人前に出ないがね。君と同じくらいの年齢だと思うが・・・」 さぞや似ているのだろうと、問いだそうとしてイザークはクルーゼの背後を移動するボーイが目に入った。黒いスーツにどことなく着せられている感があるが、そう、夜の街の狭間で幾度となく顔を合わせた第7機動隊の稼ぎ頭。 なぜ、こいつがここにいるっ! 僅かな表情の揺れだけで驚きを納めると、浮き足立った感情がさっと引いていく。 「母が呼んでいるようです。失礼」 どこがそんな風に見えるのかという突っ込みはおいて置いて、イザークは強引に会話を打ち切った。人込みの中に銀のスーツ姿を滑らせてエザリアとレノアの輪に向かう。 「セブンスフォースか」 クルーゼの呟きを聞きとめる間もなく、イザークは会場に散らばる天使達を捕らえていた。給仕のボーイや、警備関係者として数人が紛れ込んでいる。 迂闊だったな。対テロ条約など、あいつらにとっては邪魔でしかないだろう。 何を掴んでいる? 「噂をすれば、だわ。イザ―――」 エザリアの言葉は最後まで叶わなかった。 シャンデリアが2回ちらついて、ホールの通風孔から白い煙が降りてくる。 「母上っ!」 明かりが戻ったそこは、逃げ惑う参加者と、会場出入り口を封鎖する警備関係者だった。そこここで小競り合いの怒声が起きるのを、母の傍らに立つイザークは聞く。目の前のプラント最高責任者の女性はいたって落ち着いており、同じように重役やガードマン達に囲まれている。 「テロ・・・でしょうか」 「そのような事を軽軽しく口にしないで」 評議員本人の前で、条約締結のレセプション会場がテロに遭うなど、例え真実でも口には出せない事柄だった。重役の一人がこぼした一言を咎めるようにレノアが制し、申し訳ないと言った表情をエザリアに送る。 「条約締結直後から早速標的とはな、先が思いやられる」 「そのための条約でしょ」 白い煙がホールの床を這うはじめてようやく、避難誘導が開始された。主催者である都市の外交部責任者がマイクで会場の空調設備の不具合をつたて、兼ねてより予定時間も差し迫っていた事とあわせて本日のレセプション終了を告げる。 4つの会場出口から人数をカウントされながらフロアーを後にする最中も、イザークは天使達の動向に気を配っていた。 ストライクは反対の中二階の出口。 しかし、警備はどうなっているのだ。このような事・・・あってはならぬことなのに。 母を差し置いてイザークが何かを言うことはできないとは言え、市政府の面子を潰すような出来事に危機管理責任者を問い詰めたい心境であった。サイレンや館内放送など一切ない、静かな避難活動であった。 それほどこの条約が気に食わないと・・・? 確かに面白くはないだろう、だが、参加者の中にはスレイヤーに好意的な人物がいないわけではない。ましてプラントトップもいる。第一、ギルドに纏められているとはいえ、スレイヤーは皆大規模な団体行動など適さない。 ぞろぞろとエレベータホールに人が集い順番を待つ。よくできた騎士像が紳士淑女を出迎えるはずのエレベータホールも、今は芋を洗う人でいっぱいであった。誘導にしたがって階を変え、エントランス前のホールに出る。途中、スレイヤーにやられた天使のエンジェルコアが瀟洒な通路に漂っていた。 「一斉に退去したのでは、主要なエントランスは大混雑だろうに」 「母上、そのための控えフロアなのでは」 街のアイスクリーム屋に並ぶのではないから、参加者はそれぞれのエアリムジンが到着するまで控えのフロアに通される。 そして、事態を説明する人間の最後尾にイザークはストライクを見つけるのだった。 その少し前、イザーク達とは別のグループの避難を任されたセブンスフォースは、中二階の出入り口からエントランスへと参加者を誘導していた。キラも第7機動隊のベストを着て、参加者を散らばらせないように最後尾を歩く。隊列を乱す参加者に離れないようにと言ってわき道にそれないようにして、横の通路の先に目を留める。並び立つ騎士のレプリカを照らす明かり。 ・・・あれって。 ベルベットの絨毯からぽぉっと浮かび出てくるものがあった。淡くゆらゆらと漂う光は、紛れもなくエンジェルコア。そう認識した途端、キラは『はぐれないように』と言ったそばから、通路の先に駆け出す。 思ったとおり、それはエンジェルコアで、こんなに間近で接するのは久しぶりだった。 マリューさんの話が本当なら、僕はこれを運べるはず。 しかし、一度も運び方なんて教えてもらっていない事に呆然として、そうしてキラが実行したのは、ただ両手で包み込む事。 手のひらに感じる微かな温かみ。指から漏れる弱弱しい光。 「やったっ」 ただ掴めただけなのに、一仕事終えたような達成感。キラは肩の力を抜いて、通路を戻ろうとすれば、後に立っているマリュー。 「やっぱり・・・キラ君ならできると思っていたわ。自然とエンジェルコアの扱いも分かるのね。卵を包み込むようにって」 嬉しそうな笑みにキラは複雑な気持ちになる。自分で思いついたわけではないのだ。ただ、あの時、彼がこうやって小ビンを両手で包んでいたから。それを自分は思い出しただけ。 「これ、どうしますか。このままってわけにも」 「少し穢れているけど大丈夫。これに入れてちょうだい」 そう言ってマリューが懐から取り出したのは、小さな透明な入れ物。確かに卵のような形をしたカプセルで、軽くひねると二つに割れた。砂を落とすようにコアをその中にすべり落とす。透明だと思ったガラスの容器が虹色に光って、蓋をすると微かに光がスパークする。 ずっと綺麗なスパークを見たことがあるキラは、その光が消えそうだと寂しげに思った。 「それは貴方が持っていて。今度こそ大丈夫だから」 遅れて通路に戻った時、そこにナタルを見つけてその理由を知った。 ローエングリンが撃たれるのだ。 「まだ参加者の誘導が終わっていないグループがあるらしいから、そっちへ回ってくれる?」 マリューの指示どおりキラは下の階へと向かう。ぞろぞろと歩く参加者達は、やはり街の有力者や経済人で、普段のキラからは想像もつかないセレブな人たちである。知り合いなどいるはずもなく、一生着ないと思われる服装に目が行った。 うちの母さんじゃさまにならないよな。って言うか僕もあんなスーツ着ろって言われても困るし。そしてキラの視線は派手ではないが刺繍細工が施されたスーツに目が止まる。 ああいうのならちょっといいかもね。格好よくて。 なんて言うの、中世? 男のくせに髪の毛縛ったりしてさ、すごい銀髪だ。 宝石みたいな真っ青な目・・・そこまで認めて、キラは息を呑む。 向こうは最初からキラが見ていたことに気が付いていたのか、こちらを見ていた。見事なサファイアブルーに見覚えがないはずがなかった。服装チェックなどしている軽い気持ちは吹き飛んでしまう。 イザーク。 傍にいるのは母親だろうか。外見がそっくりだった。夜の都会で垣間見るスレイヤーの彼とは雰囲気がまるで違う。違うのに、やけにしっくり来る出で立ちに、不意に怒りが込み上げてくる。 「スレイヤーのくせに・・・」 キラの呟きが聞こえたのか、そうでないのか、相手が目を細める。群集がいなければこんなチャンスなどないのに、アグニを手にしてないことをこれほど悔やんだ事はなかった。 にらみ合って数分もしないうちに、エントランスの混雑が収拾したと報告に来た警備の人間から連絡は入る。キラは仕方なく、手分けして情況を説明する。この異常事態にテロじゃないのかと詰め寄る参加者もいたが、ここは努めてそうではないと言った。微かに銃声が聞こえる中で、キラの子供っぽい顔つきでどこまで信用されたのかは疑問だった。 「こちらから。気を付けてください」 SPに囲まれた女性を誘導する。朱桜色のイブニングドレスの女性は黒いショールで珍しく首まですっぽり覆っていた。耳を飾るエメラルドが瞳と同じ色で・・・。 ―――えっ!? あまりに似すぎていて。護衛が暗にどけと手で合図するのにも関わらず前に立ち尽くす。 「ありがとう」 護衛に守られるように顔を見せて優雅に微笑む女性が、キラの目の前を通り過ぎていく。直ぐにSPに覆われて後姿さえ見ることができなかった。 「あれがプラントの総帥。驚いたね。まさかあんなに美しい女性とはな、うちの氷の女王と張るな」 フラガが誰と対比しているのかそれとなく分かってしまい、彼を探した。この騒ぎの中でも独特の空間を作っているそこに、氷の女王ことエザリア評議員と、その血縁であるであろう彼がいる。あたりを見回せば、先ほど見送ったばかりのプラントの一団の傍にいて、エザリア評議員と例の女性が話している。そこに銀髪の彼が加わる。 すぐにエントランスに向かうはずが、その一団は動きを止めて後続の参加者に道を譲るではないか。 「順番なんですから、早くしてください」 慌てて駆け寄るキラの横を通り過ぎる彼が一言。 「今出て行くなど、自殺行為だ」 非難するように進めるキラを遮って、イザークがキラの腕を掴んで止める。見下ろされる青い瞳には特に何も感情が浮かんでいないように見えて。キラは慌てて振りほどいた。 「どういう意味ですか」 周囲の視線が痛い。一介の警察関係者のキラと目立つ容貌のイザークでは迫力が違う。それでも、ここでの主導権はセブンスフォースにある。じきに発射されるローエングリンのことを考えても彼らはすぐにこのビルを立ち去るべきだ。 「外ではテロリストの襲撃が起こっているのだろう。安全確保が先じゃないのか」 「違いますよ。ビルの空調設備の不調です」 レセプション一つ満足に開催できない街の警察機構の実態を露にできない。外にテロリストが集っている今は一斉に葬るチャンスでもあり、時間がない。 「それにしては仰々しい対応だな」 これ以上何を言えって言うんだ。視線は逸らさずに、でもキラは助け舟を求めていた。そこに飛び込んでくる別の参加者の暢気な声。 「もう行ってもいいですかな」 「ええ、どうぞ。お気をつけて」 マードックとマリューの咄嗟の機転で事態が動き始めた。 キラのインカムにカウントダウン開始が届く。 『ローエングリンスタンバイ』 『本部より現場各員へ。照射開始後は速やかに手順どおり作業を開始する事』 イザークと向かい合ったまま、情況は刻一刻と変化する。 『こいつら全員やっちゃった方が早いんじゃねーの。悪魔も人間も一緒なもんだろ』 『ウザーイ』 妙に若々しい声に、キラは一瞬眉を潜めた。 『こらっ、お前達、勝手な事をするな』 ナタルの声と共にブチッと回線が切り替わる音がして、またカウントダウンが届く。マリューやフラガを見ると、同じように首をかしげている。この見知らぬ声の犯人を知っているわけではなさそうだった。 視線を感じて顔を上げれば、エントランスに向かうイザークが怪訝な表情を見せている。女性を送るちょっとした仕草さえ洗練されているさまに悔しさを感じる。 我慢。我慢。それも後少しなんだから。 それでも消えない悔しさの原因をキラは自分で分かっていたから、それ以上彼を追わなかった。空の両手を握り締めて唇を噛む。他の参加者達をエントランスまで送る間も意識して視界に入れないようにしていた。 間もなくローエングリンの照射が始まる。 そうすれば彼は死ぬ。 ああ、早くエアカーでもリムジンでもなんでもいいから早く乗り込んでくれ。 だが、キラの願いも虚しく、人で溢れ返るエントランスは下からの爆風で吹き飛んでいた。 倒れた人々。ひび割れてなくなったガラス階段と跡形もないアプローチ。 「情況確認早く!」 マリューの叫び声と、フラガの怒鳴り声と。後は参加者の叫び声、怒声、逃げ惑う群集で、あたりはパニックになった。 「ナタルっ!?」 カウントがゼロになり、インカムにローエングリン照射を告げる天使の声が響く。吹き飛んで夜の都会が筒抜けになったエントランスからは、本当に細かい霧雨が降る摩天楼が見えていた。 上空を滑空する天使達が見える。このビルに降り立つ天使もいるだろう。キラはインカムから流れる情報を便りにビル内を探し回る。逃げ送れた参加者がいるならさっさと逃がして、自分はストライクとアグニを取りに持ち場に戻らなければならないのだ。 通路で何人かの参加者とすれ違う。会う人ごとに早く逃げるように催促して、もう一つのエントランスである中二階に向かう。 「キラ・・・?!」 思いもかけない人物に鉢合わせした。茜色の髪を揺らして不安そうな顔をする彼女を支えるのは、カレッジの同級生のサイ。必死な表情の彼女はフレイだった。 「どうして、二人ともこんな所に」 「俺達はフレイの親父さんを迎えに。そしたらこの惨事でさ。それよりお前こそ、何やってんだよ。警備のバイトなのか?」 言える訳がない。セブンスフォースの一員だって。 「お父様? どこお父様」 「あっ、フレイ! そっちは危ないよっ」 フラフラとテラスに向かってうろつくフレイ。関係者を見つけたのか、小走りで向かう。慌ててサイとキラが追うが追いつけず、彼女は霧雨の中を立ち尽くしている。テラスにあるのは動かない一山。動き回っている人影は警察関係者で、雨に濡れないように遺体にシートをかけていたのだった。 「フレイ見るな!」 「いやあぁぁぁぁ」 叫び声と涙が夜空に響き、自分の影に浸食されるフレイ。サイが慌てて支えて、壁にもたれ掛けるか、背中の影がどんどん小さくなる。 びくびくと体がはね、通常の状態ではない事が見て取れた。軽いショック症状だけではない異常事態が彼女に起きている。 「とにかく中へ運んでっ!」 異様な重さのフレイを運ぶ事は叶わず、テラスの壁に持たせかける。雨がかからないだけましだった。 「キラっ、お前その格好。・・・・・・なんで」 サイの視線がキラの着ているベストに注がれ、キラから言わずともバイトの真相がばれたことを知った。駄目押しとばかりに、フレイを支えようと駆け寄るキラの懐から転がり落ちる、光る入れ物。それが何か分からないサイとフレイではなかった。 光を失ったフレイの瞳から涙がただ溢れる。 「ごめん」 「キラは天使は守るくせに・・・・・・パパは・・・守ってくれなかったのね」 「ごめん」 焦点を無くした目で、夜の都会に向けて呟くフレイ。彼女を抱きしめるサイ。 「どうして・・・どうしてパパが死ななきゃならないの。あんなに一生懸命・・・」 謝る事しか思いつかなかった。 こんなことになるなんて思わなかった。 自分の判断が元で誰か親しい人が死ぬなんて。 僕があの時、もっと慎重にしていればフレイのお父さんは死ななかったかも知れない。 「そのままだとその女も死ぬぞ」 重く沈んだ雰囲気に一石を投じた声に、キラとサイが振り向いた。テラスをうかがうように立っているイザークだった。幸いにして二人とも面識があったから慌てて取り乱すような事はなかった。 「どう言う意味・・・」 「その女は堕ちかけている。もうほとんど堕ちているがな。悪魔となった人間が今、外にいて大丈夫なのか?」 イザークの言葉にキラははっとなった。 ローエングリン照射は相変わらず続いて、フレイがビクンビクンと震えるのは父親を無くしたショックからじゃないとしたら。何より、小さなエンジェルコアが産み出す影が異様にフレイのだけ小さい訳が、本当に彼の言うとおりだとしたら。 「動かすのは無理だろう。堕ちたら通常の数倍の重力が掛かる」 「堕ちるって? キラどういうことだ」 キラとイザークには馴染みのある言葉でも、サイにそれを現実の事として捕らえることは無理だった。まして、自分の彼女が悪魔になりつつあるのだと。 「サイ、それは・・・」 「あれっ、こんな所に悪魔見っけ」 霧雨に煙るテラスの向こうに突如下りてきた天使。三体がテラスのフレイを見下ろし、その嫌な雰囲気にサイが彼女を抱きしめる。キラは立ち上がり、見上げた。 「なんか死にそうじゃん?」 「彼女は悪魔なんかじゃありません」 面白そうに見る天使達はそれぞれに個性を持っていて、キラはナタルの通信に割り込んできた声だと気が付いた。とすれば大天使以上の天使。 「まっ、俺はいいけど。お前、奥の奴と何を話してたんだよ」 「そいつスレイヤーだろ。さっさとやっちまおうぜ」 背後で舌打ちが聞こえる。僅かな空気のゆれと共に気配が遠くなる。追うようにして、3体の天使がテラスから奥へと滑空する。フレイには手を出さずに暗がりに消えた天使と、消えたエンジェルスレイヤー。静かになった夜の霧雨が降るテラスに残された3人。 「サイ・・・」 「助かるのか? フレイは・・・もう駄目なのか?」 キラはフレイを抱きしめるサイの前でただ頭を垂れるほか無かった。キラには答えるべき回答を何一つ持っていなかった。何より、人間が魔に堕ちる現場というものをはじめて見たのだ。 3天使も加わり、ビル内を疾走するイザーク。 「逃げるなら下じゃないの、イザーク?」 それなのにイザークは閉まる上に向かうエレベータに飛び乗っていた。ちょうど下に向かうエレベータのドアも開いていたというのに。手だけ突っ込んで扉を閉めてから、わざわざ上に向かう事を選択する。 ガラス張りのエレベータからは霧雨の降る摩天楼にネオンがぼんやりと輝いている。いつもよりもずっと明るい夜。 「もしかして、あの子こと気になってるとか?」 「うるさいっディアッカ! 貴様も考えろ。奴らの新兵器はなんだと思う?」 ボタンの前、外からも中からも直撃を受けない位置に持たれて腕を組む。 「やっぱり~」 影から姿を見せる悪魔にギリッとキツイ瞳を向ける。 「やっぱ、空じゃない? 有効射程はそうだなあ、半径1キロくらい」 電子音ではない鐘の音が到着を告げて、外をうかがった後廊下に飛び出る。そのフロアに天使はおらず、急に冷えた空気と湿った風がなだれ込む。降りたばかりのエレベータのガラスが砕かれて、下からいきなり姿を現す天使達。風を切る羽音が迫る。 「随分と凶暴な天使じゃないのっ」 口笛を吹くディアッカがイザークの影に沈み、すぐさま、横を衝撃波が走る。絨毯がめくれ、壁に掛かったライトがはじけ飛ぶ。破壊された装飾品が縦横無尽に飛んでくる。いくらイザークが悪魔と契約して超人的な力を得ていると言っても、元は人間である。当たれば痛いし、刺されれば血も出る。 「エンジェルスレイヤー顔負けだ」 壁に穴を穿つ光線を避けた拍子に髪を掠めて、束ねていたリボンが焼ききれた。暗がりに銀糸が舞う。 エレベータホール前で騎士像が持っていた武器をひっ捕まえる。脇につるした銃の感触を冷たく感じる。水分を含んで広がる髪をなびかせて、屋上へと続く非常階段を上る。勿論、非常シャッターを下ろすことは忘れない。 辿り着いた屋上階の施錠を銃で打ち抜いて、肩から体当たりする。強風に雨が混じる冷気が吹き上げる、そこは屋上。視界に入る赤い非常灯と、頭上を飛び回る天使達。 上空を見渡そうと一歩を踏み出した。 「やばい。やばい、イザーク出るなっ!!」 「何っ」 悪寒。と言うより火傷のような神経に直接響く痛覚に、イザークも足を止めて戻る。空気に含まれている何かが、いや、屋内で作用しないなら目に見えない光線か何か。切羽詰ったディアッカの声と自分の状態に正体を悟る。 これかっ! 屋外でのみ作用する対悪魔兵器。霧雨を降らす上空を仰いで天使達を追う。 銃を構えるイザークが空の一点を狙う。水の粒子に反射して浮かび上がる燐光の外輪。その中心。 「ディアッカっ! アレを狙うぞ」 「無理無理。届かねえって」 言い争ううちにも近づく破壊音。 どれくらい持つ。10秒・・・いや5秒で沸騰死だろう。 「イザーク! それでか? 無理だって」 「迷っている暇はない。ハンドガンで駄目ならこれだ」 騎士像からかっぱらってきた武器。レプリカに違いないが、この土壇場で使えるような代物ではないのは百も承知。それでも、イザークは弦を引っ張って弓なり具合を確かめた。置物が持っていた装飾の施されたアーチェリーを構える。 もう直ぐそこまで羽音が聞こえ、大気が揺れる。 「ディアッカ、分かっているな!」 「まじかよっ」 外輪の中心を狙うイザーク。腕に力をこめて、矢を引くが、身体は急に押し出された。追いついた三天使が爆風共に屋外に投げ打つ。 蒸発する自らの影。うわあ゙ぁぁ―――!! 「こ・・・の・・・腰抜けがあっ」 体が宙を舞い、苦痛に顔をゆがめてもなお、イザークは矢を引いた。身体をひねり、暗雲垂れ込める夜空の一点を定める。大気の湿度と風、初速と移動ベクトル、矢に掛かる重力。そんなことなど計算せずに、夜空に放たれる1本の矢。ディアッカの魔力を受けて輝き、銀紫の尾を引いて伸びる。 上空で聞こえる爆発音、雨雲を白く覆う煙のベール。 ドサリと落ちて、勢いのまま屋上のコンクリートの上をすべる身体に先ほどまでの灼熱感はない。直ぐに弓を投げ捨てて、銃を構える。起き上がろうとして激痛のまま膝を折った。 くそっ。目が。全身の感覚が麻痺しているのか。 霞む視界に見えるのは自分を追ってきた3天使。見えなくても囲まれたくらいは気配でわかった。 「滅殺ッ!」 感覚のない手で銃を上げて引き金を引く。天使の肩を貫いて銃弾が雨空に消え、天使が振り上げる腕の先には今時珍しい剣。呆然と振り下ろされるのを見る。ネオンに鈍く光る刀身と、自分の目の前で鉄柵で防がれる光景を。上空のエアバイクから打ち込まれた鉄柵が天使と自分を分かち、武装した集団が逆に天使を取り囲んでいた。 最後にエアビーグルから降りてくる男をイザークは知っていた。今日のレセプション会場で知り合った男、クルーゼと言ったか。 「間に合ってよかった。君の母上に頼まれたのだよ」 如何にしてイザークを活躍させるかが今回のテーマだったのですが、あんまり・・・。なぜ。難しいですイザーク。この現実派ヤロウ。あまり無茶な奇天烈なことできないし。まじめだし、義理堅いし。マザコンだし。イザークが活躍できるシチュエーション求む!
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#blognavi よくみると細かい擦り傷があちらこちらに走っているアラバスタの柱に凭れてイザークは目を閉じていた。突然の伺候を知ったのが昨日の昼。まだ、屋敷に戻らないディセンベル伯を待ち伏せして昨日は一日を無駄にしてしまった。黒い槍のような塀が取り囲む王都で一・二を争う古さの屋敷は中に長年のライバルが戻ったと言うだけでだいぶ印象が変わる。今まではただの抜け殻のようにひっそりとあった屋敷はまるで墓場のようだった。黒い塀に煤けた黒い壁、明かりが殆ど灯らないとなっては幽霊屋敷もかくやと言うあんばいである。通された部屋で親の敵とばかりに、タペストリーのザラの紋章を見上げて不敵に笑う。 通路の向こうに気配を感じて組んでいた腕を解いた。一歩ずつ近づくたびに、指先がちりちりと震えるのを感じた。羽織った外套の留め金が奇しくも同じモチーフをしていた。 「遅かったな」 「初めてなんだ、王城とは広い所だ」 同じくらい広い城を持つくせに、わざとらしく肩を竦める。微かに上目遣いに唇の端を持ち上げて笑う。衛兵達の視線を感じたが、イザークは顎を上げて見下ろした。 「迷子にならずにここまでたどり着けたことだけは褒めてやる」 「それはお褒めに頂き光栄だ、マティウス卿の跡継ぎ殿。ここでは新参だ、宜しく頼む」 相手は伯爵。対する自分はただの公爵の跡継ぎで家督は今だ母が持っている。本当なら、膝を折るのは自分であるのに、相手がアスランであればそれには及ばない。 「まちくだびれたぞ」 「お手柔らかに頼む」 しかし、手を差し出すのはイザークからだ。硬く握りあって、通路の大理石の柱を後にする。遠巻きに見ていた者達もこれでいつもの勤務に戻るだろう。ディセンベル伯とジュールの倅が何事かを話していた。そんな噂も今日中には知れ渡るのだろう。 「貴様、抜かりはないだろうな? まず簡単に情勢からだ」 国を取り巻く環境、それとも、この王城に渦巻く力バランスか。何せ少し前まで宮廷を牛耳っていたザラの跡継ぎで、前伯爵は現国王の無二の親友にして、その従姉妹を妻に迎えた男である。ディセンベル伯の王城入りに何の目論みも無いはずがない。 最もそういう世界に翻弄されそうなこいつがどのように変わっていくのか。確かに楽しみにしている自分を自覚して、イザークは柄にも無く、面白いことが起こるだろうという予感がしていた。 言葉が出てきません。 最近なんだかこう言う事が多いです。今回は「目論見がない」になりましたが、本当はもっと硬い言い回しがいいんだ。「忌憚なく」「腹蔵なく」「魂胆がない」どれもこれもしっくりこない。2面性があって、裏で何かを企んでいるに違いない・・・なんてことを表現したいのに。そのまま書いたらイザークさんじゃなくなってしまうよ。はあ、お話って、難しいなあ。 カテゴリ [ネタの種] - trackback- 2006年10月03日 22 12 29 #blognavi
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管理人の日記/2010年12月05日/迷う~ #blognavi